ソフトバンク(9434)は「携帯電話の会社」に見えて、実はPayPay・ヤフー・LINEを束ねた日本最大のデジタル経済圏です。新NISAで高配当株を探している方や、日本株の通信セクターを検討している方にとって、まず押さえておきたい銘柄の一つです。


【5分でわかる企業分析】ソフトバンク|なぜこの会社は「通信会社」に見えないのか?


ソフトバンクという会社を、「携帯電話の会社」と思っている人は少なくないと思います。

でも実際には、通信を土台にしながら、PayPay、ヤフー、LINEを抱える「デジタル生活インフラ企業」です。

毎月あなたが使うスマホ料金が、どんなビジネスを支えているか——今日はそこを掘り下げます。


この会社、何をしてる?

ソフトバンク(株式会社ソフトバンク、証券コード9434)は、主に3つの事業で成り立っています。

コンシューマー事業(個人向け通信)、法人事業(企業向けITサービス)、そしてメディア・EC事業(ヤフー・LINEを中心としたインターネットサービス)。

毎月払うスマホ代がコンシューマー事業の中心で、安定したキャッシュを生み出しています。そこに、PayPayやヤフーショッピングという日常使いのサービスが組み合わさっています。

ここで少し整理しておきましょう。「ソフトバンク」という名前の会社は、実は複数あります。孫正義氏が率いる投資持株会社「ソフトバンクグループ(9984)」と、今回分析する「株式会社ソフトバンク(9434)」は別会社です。ソフトバンクグループはアームやビジョンファンドを通じた世界規模の投資会社ですが、株式会社ソフトバンクはその子会社で、日本の通信・デジタルサービスに特化しています。

この記事でフォーカスするのは株式会社ソフトバンク(9434)のほうです。個人の投資家が株式市場でよく目にする会社で、高い配当利回りで知られています。


実はここが儲かっている

ソフトバンクの強さの一つは、通信とサービスの「セット売り」です。

スマホ回線を持っているお客さんに、PayPayのキャッシュバック、ヤフーのポイント、LINEの無料通話をセットで提供する。切り替えると一気にサービスを失うから、解約しにくい。スイッチングコストが高い、典型的なビジネスモデルです。

2024年度の売上は約6兆円、営業利益は約9,000億円超。連結子会社のLINEヤフーを含めると、日本の「デジタル経済圏」の中でも最大規模の一社です。

通信事業の安定感を理解するために、少し考えてみてください。あなたが今月、スマホを解約しましたか?おそらくしていないはずです。現代人にとってスマートフォンの通信料は、電気・ガス・水道と同じ「生活インフラ」になっています。景気が悪くなっても、スマホ代を削る人は少ない。この「不況に強い安定収益」が、通信事業の本質的な強みです。

また、法人向けのITサービスやDX支援事業も成長中で、企業の「デジタル化のパートナー」としての位置付けを強化しています。中小企業のデジタル化が遅れている日本では、「ITのことはソフトバンクに相談」という企業が増えており、法人事業は実は地味ながら高収益なセグメントです。

PayPayの存在感も特筆すべきです。2018年のサービス開始から爆発的に普及し、今では日本最大のQR決済プラットフォームになっています。コンビニ、スーパー、飲食店、ネットショッピング——日常のあらゆる支払いシーンに入り込んでいます。


なぜこの企業は強い?

ソフトバンクの強さは、3つのインフラを同時に持っていることにあります。

通信インフラ(全国の5Gネットワーク)、決済インフラ(PayPayの国内最大シェア)、情報インフラ(ヤフー・LINEの圧倒的なユーザー数)——それぞれを持つ会社はいても、3つ全部を持っている会社は他にほぼありません。

PayPayだけで月間利用者数6,500万人以上(2024年時点)。この数字は、ほとんどの日本人が何らかの形でソフトバンクグループのサービスに触れているということを意味しています。

さらに、この3つのインフラが互いを強化し合う構造があります。

スマホ通信でソフトバンクを使っていれば、PayPayのキャッシュバックが増える。PayPayで支払うとYahoo!ショッピングのポイントが貯まる。ヤフーのニュースを見ながらLINEで友人と共有する。このエコシステムの中で、ユーザーは知らず知らずのうちにソフトバンクグループのサービスにどっぷり浸かっています。

競合他社が個別には追いつけても、この「組み合わせの強さ」を真似することは非常に困難です。NTTドコモはdポイントを持っていますが、PayPayほどの加盟店数はない。楽天は楽天ペイを持っていますが、通信インフラに強みはない。ソフトバンクのポジションはユニークです。


リスクは?

最大のリスクは、通信市場の競争激化と価格圧力です。

楽天モバイルの参入や、政府による携帯料金値下げ圧力により、ARPU(ユーザー一人当たりの収益)が下がり続けています。

「スマホ料金は高すぎる」という政府の問題意識は根強く、今後も値下げ圧力は続く可能性があります。通信料金が下がればソフトバンクの通信事業の収益が直撃します。実際に2021〜2022年にかけての大幅な料金値下げで、通信会社の業績は一時的に悪化しました。

また、ヤフーとLINEの経営統合(LINEヤフー)は情報管理問題などを巡って行政指導を受けており、ブランドへの信頼回復が課題として残っています。個人情報保護の観点から、LINE側のサーバー管理の問題が指摘されており、この問題が長引くとユーザーの信頼に影響します。

さらに、PayPayは利益よりも先行投資の段階。競合との競争が続く中で、いつ収益化のステージに入るかが注目されています。PayPayは加盟店を増やすために手数料を低く設定し続けてきましたが、市場シェアが固まってきた今、収益化に向けてじわじわと手数料体系を見直す動きが始まっています。


今後どうなる?

注目すべきは、生成AIとの組み合わせです。

LINEという日常的なコミュニケーションツールに、AIアシスタントが組み込まれれば、生活の中に自然にAIが入り込む形が実現します。ソフトバンクはOpenAIや国内AI企業との提携も積極的で、通信×AIという軸が今後の成長のカギになりそうです。

具体的には、「LINE上のAIアシスタントがあなたの日常をサポートする」という世界が近づいています。旅行を計画したいとLINEで話しかければ、AIが予約まで完結してくれる。PayPayの使い方をAIがアドバイスしてくれる。こういうサービスが実現すれば、ソフトバンクのプラットフォーム価値は一段上がります。

また、法人DX支援事業の拡大も成長ドライバーで、企業のデジタル変革を請け負うBtoBビジネスは利益率が高い傾向があります。日本の中小企業がDXを進める波は、まだまだ初期段階です。ここに早期から入り込んでいるソフトバンクの法人事業は、今後数年で大きく育つ可能性があります。

5G時代に向けた新たなサービス(スマートシティ、コネクテッドカー、IoT)も中長期の成長テーマです。通信インフラを持っているからこそ入れるビジネスの領域は広く、テクノロジーの進化とともに新たな収益機会が生まれてきます。


まとめ

ソフトバンクを一言で言うなら、「通信を土台に、日常のデジタル生活全体を支配しようとしている会社」です。

PayPayで払い、ヤフーで調べ、LINEで話す——その全てのインフラを一社が握っているという構造は、日本のデジタル経済圏において非常に独特の強さです。

通信の安定収益を軸に、AIとPayPayの収益化が進めば、長期投資家にとって注目の銘柄になり得ます。

「スマホの会社」という認識を少し変えて、「日本のデジタル経済圏のインフラ企業」として見直してみると、ソフトバンクという会社のポテンシャルが改めて見えてくるはずです。


よくある質問(FAQ)

Q. ソフトバンク(9434)とソフトバンクグループ(9984)は何が違う? A. ソフトバンクグループは孫正義氏が率いる投資持株会社で、アームやビジョンファンドを通じて世界規模の投資を行う企業です。株式会社ソフトバンク(9434)はその子会社で、日本国内の通信・デジタルサービスに特化した会社です。高配当株として個人投資家に人気なのは9434のほうです。

Q. ソフトバンク株は新NISAで買える? A. 国内株式を扱うほとんどの証券会社でNISA口座を使った購入が可能です。高配当利回りで知られるため、成長投資枠での長期保有を検討する投資家が多い銘柄です。

Q. PayPayはいつ黒字化する? A. 明確な時期は公表されていませんが、市場シェアが固まってきた現在、手数料体系の見直しを通じた収益化が徐々に始まっています。PayPayの黒字化はソフトバンクの利益向上に直結するため、投資家が注目する重要な指標です。

Q. ソフトバンクのリスクで一番気をつけるべきことは? A. 政府の通信料金値下げ圧力による収益減少と、LINEヤフーの情報管理問題が主なリスクです。また、有利子負債が多く財務レバレッジが高い点も、金利上昇局面では注意が必要です。

Q. ソフトバンクとNTTドコモ、KDDIを比べるとどう違う? A. NTTドコモは国内最大の加入者数、KDDIは安定した配当と通信品質で評価されます。ソフトバンクはPayPay・LINEというデジタルプラットフォームとの融合が最大の差別化点で、通信以外での収益化余地が大きい点が特徴です。


※本記事は「企業分析」を目的とした内容であり、特定銘柄への投資を推奨するものではありません。 ※投資は自己責任でお願いします。