この記事では、東レ(証券コード3402)の株への投資を検討している方に向けて、なぜ「繊維の会社」というイメージの東レが、ボーイングとエアバスという競合する2大航空機メーカーの両方に炭素繊維を供給できているのか、その収益構造とリスクをまとめて解説します。
「東レってユニクロのヒートテックを作っている会社だよね?」——その答えは、半分しか合っていません。東レの本当の主役は、空を飛んでいます。ボーイング787の機体は重量比で約半分が炭素繊維複合材料で構成されており、その主要サプライヤーが東レです。そして、ライバルのエアバスにも同じ会社が供給している。
本記事では、東レのビジネスモデル・財務・配当・リスク・同業比較までを、長期投資の視点で網羅的に整理していきます。
はじめに
この記事の対象読者
- 東レ(3402)の株を新NISAや長期投資で検討している方
- 炭素繊維・素材産業というテーマに興味があるが、ビジネス構造がよく分からない方
- 帝人・三菱ケミカル・旭化成など化学・素材株を1銘柄ポートフォリオに加えたい方
この記事でわかること
- 東レの事業内容と収益構造(炭素繊維・水処理膜を中心とした稼ぎ方)
- なぜボーイングとエアバスの両方が「東レを外せない」のか
- 炭素繊維のEV・水素・洋上風力向け需要が伸びる具体的な根拠
- 投資家として押さえておくべき短期・長期のリスク
- 配当推移・株主還元の方針と、帝人・三菱ケミカル・旭化成との比較ポジション
結論サマリー
東レは「繊維で培った素材化学を炭素繊維・水処理膜・電子材料に展開する複合素材コングロマリット」で、10〜20年スパンで脱炭素・電動化・水ビジネスの構造変化に乗りたい長期投資家との相性が良い一方、短期値上がり益・高配当インカム狙いには向きません。
参照した情報源
本記事は以下の一次情報を中心に作成しています。
- 東レ 2025年3月期 決算短信・有価証券報告書
- 東レ 中期経営課題「AP-G 2025」関連IR資料
- ボーイング・エアバス両社の航空機向け炭素繊維採用に関する公表情報
- 経済産業省・各種業界団体の脱炭素・再生可能エネルギー関連の公開統計
最終更新日
2026-05-29
企業概要:この会社、何をしてる?
東レは、合成繊維・合成樹脂から炭素繊維・機能フィルム・電子材料・水処理膜・医薬品まで手がける、日本を代表する総合素材化学メーカーです。本社は東京都中央区、証券コードは3402、東証プライム市場に上場しています。
創業は1926年。当初は「人絹(レーヨン)」を作る会社として出発した、日本最古級の合成繊維メーカーです。ナイロン・ポリエステルなどの繊維で成長し、その素材化学の知見を、より付加価値の高い「素材」と「化学」へと展開してきました。
いまの東レを「繊維会社」と呼ぶのは、実態とかなりズレています。売上の中身は、繊維事業がおおむね3割。残りの約7割は、炭素繊維複合材料・機能化成品(フィルム・樹脂)・電子情報材料・環境エンジニアリング(水処理膜)・ライフサイエンス(医薬・医療)で構成されています。
顧客の顔ぶれを並べると、輪郭がはっきりします。ユニクロには機能素材(ヒートテック・エアリズム)を長年共同開発・供給し、航空機ではボーイングとエアバス、半導体では世界の最先端工場、中東では海水淡水化プラント——B2Cの最終消費者ではなく、「ものづくりをしている世界中の会社」が東レの顧客です。最終製品を使う人ではなく、それを作るメーカーに素材を売っている黒子に近い立ち位置です。
基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 商号 | 東レ株式会社 |
| 証券コード | 3402(東証プライム) |
| 設立 | 1926年1月(東洋レーヨンとして創業) |
| 本社所在地 | 東京都中央区日本橋室町 |
| 主要事業 | 繊維/機能化成品/炭素繊維複合材料/環境・エンジニアリング/ライフサイエンス |
| 売上規模 | 2兆5,000億円規模(2025年3月期実績) |
| 従業員数 | 連結約4万8,000名 |
| 主要市場 | 日本・アジア・米州・欧州 |
※ 出典:東レ 2025年3月期 決算短信・有価証券報告書(数値は概算。最新値は公式IRをご確認ください)
収益構造:どこで稼いでいる?
東レを「繊維の会社」として見ていると、いちばん儲かっている部分を見落とすことになります。
最大の利益源は炭素繊維複合材料
東レの高収益エンジンの中核が、炭素繊維複合材料事業です。炭素繊維とは、ポリアクリロニトリル(PAN)という原料糸を高温で焼き固めて作る素材で、鉄より強く(比強度で約10倍)、重さは鉄の約4分の1という特性を持ちます。これがなければ、いまの航空機の燃費は成り立ちません。
ボーイング787の機体は重量比で約半分が炭素繊維複合材料で構成されており、その主要サプライヤーが東レです。ここが意外なポイントですが、東レはボーイングだけでなく、ライバルのエアバスにも炭素繊維を供給しています。航空機グレードの素材は認証取得に膨大な時間がかかるため、両社とも「東レを外す」選択肢を簡単には取れません。競合する両陣営の機体が売れるほど、間にいる東レが儲かる——武器商人のような構造になっているのが、この事業の本当の姿です。
もう一つの柱は水処理膜(ストック型収益)
もう一つの高収益エンジンが、水処理膜事業です。海水を真水に変える「逆浸透膜(RO膜:圧力で水だけを通し塩分を除く膜)」や工業排水のリサイクル膜で、東レは世界トップクラスのシェアを持ちます。中東の海水淡水化プラント、半導体工場の超純水、ビル空調の冷却水——「水を扱う産業」の裏側にはたいてい東レの膜があります。
膜は数年〜十数年で交換が必要なため、一度プラントに納めれば「交換需要」が積み上がるストック型ビジネスになっているのがポイントです。設備を一度売って終わりではなく、その後も継続的に売上が立ち続けます。
地味に効く機能フィルム・電子材料
加えて、機能フィルム・電子材料も静かに利益を稼いでいます。スマホのバックライトフィルム、半導体製造に使う感光性材料など、最終製品名には出ないが無いと作れないモノを供給する立場です。「世界中の工場が動いている限り、地味に売上が立ち続ける」——これが東レの収益モデルの正体です。
セグメント別の利益構造
売上構成比では繊維と機能化成品(フィルム・樹脂)が大きな比率を占めますが、利益率では炭素繊維複合材料・水処理膜・電子材料といった高付加価値領域が全体の収益性を押し上げています。市況や原燃料価格に左右されやすい汎用繊維・汎用樹脂が利益のブレ要因になる一方、認証ビジネスの航空機向け炭素繊維とストック型の水処理膜が「業績の底」を支える構図です。
競合優位性:なぜこの企業は強い?
東レの強さを一言で言うと、「60年以上、同じ素材を改良し続けてきた時間の蓄積」です。
強み① 半世紀の赤字を耐えた「時間の参入障壁」
東レが炭素繊維「トレカ」の開発を本格化させたのは1960年代。最初の数十年は釣り竿やゴルフクラブのシャフトなどニッチ用途しか売り先がなく、社内では「いつ撤退するのか」と議論が繰り返されたといいます。それでも研究開発を続け、ボーイング787(2011年就航)で機体構造材として本格採用されてようやく主役へ躍り出ました。
赤字を耐えながら半世紀、同じ素材を磨き続けたという時間軸そのものが、最も真似できない参入障壁です。新規参入企業が同じ品質・同じ生産規模に追いつくには、同じだけの時間と研究投資を覚悟しなければなりません。
強み② 一度採用されれば10〜20年続く「認証ビジネス」
航空機の構造材は、認証取得済みの素材を簡単には変えられません。別の素材に切り替えるには再認証に何年もかかるため、メーカーは安易にサプライヤーを乗り換えられないのです。一度採用されれば、その機種が生産される10〜20年は受注が続く——これが東レの炭素繊維事業を「長期独占契約のような収益」に変える理由です。
強み③ ブランドと共に最終製品を設計する「摺り合わせ文化」
ユニクロとの関係に代表される「素材メーカーがブランドと一緒に最終製品を設計する」摺り合わせ文化も強みです。ヒートテックは東レの繊維をユニクロ向けに何度も改良した結果として生まれた製品で、ライバルが横から「同じものを売ります」と入り込める余地がほとんどない構造になっています。素材を売るだけでなく、顧客の製品開発そのものに食い込むことで、関係を固定化しているわけです。
意外な強みを一つ挙げるなら、東レの本当のライバルは、もう繊維業界にはいないという点です。炭素繊維で競合するのは帝人・三菱ケミカルや欧米の化学メジャー、水処理膜は米デュポンや韓国の化学大手、半導体材料はJSR・信越化学。事業ごとに別業界の世界企業と戦う「複合素材コングロマリット」であり、もはや「日本の繊維メーカー」の枠で語る相手ではありません。
リスク・課題
東レは構造的に強い銘柄ですが、素材・化学株特有の不確実性は無視できません。短期と長期に分けて整理します。
短期リスク
原燃料市況・為替による業績のブレ
東レの汎用繊維・汎用樹脂は、原油・ナフサなど原燃料価格の変動を強く受けます。さらに海外売上比率が高いため、円高・円安が業績を直接揺らします。四半期サプライズが頻発する銘柄ではない一方、市況と為替で短期業績はブレやすく、値動きだけ追うとファンダメンタルズの強さと乖離した時間が長くなりがちです。
ボーイングの品質問題・生産遅延への連動
787の機体構造材に東レの炭素繊維が深く組み込まれているため、ボーイングの品質問題や生産遅延が起きると、短期的に東レの受注見通しにも影響します。特定の大口顧客の動向に業績が引っ張られる側面がある点は、覚悟しておく必要があります。
長期リスク
中国メーカーによる素材コモディティ競争
汎用合成繊維・汎用炭素繊維では中国メーカーの国産化・量産化が進み、長期では価格圧力が効いてきます。航空機グレードのハイエンドは置き換えが難しいとはいえ、コモディティ寄りの製品では利益が削られていく構図です。「ハイエンドの牙城をどこまで守れるか」が長期の論点になります。
脱炭素テーマの政策依存
炭素繊維のEV・洋上風力・水素タンク向け需要は、各国の脱炭素政策が前提になっている部分が大きい領域です。政策の後退・補助金の見直しが起きれば、想定していた需要拡大シナリオが鈍化するリスクがあります。長期シナリオの一部が「政策の継続」に乗っている点は意識しておくべきです。
巨額の設備投資負担
炭素繊維も水処理膜も、需要拡大に応えるには大規模な生産設備の増強が必要です。設備投資が先行し、需要の立ち上がりがそれに追いつかない期間は、減価償却負担が利益を圧迫します。投資回収には時間がかかるビジネスである点は、リターンを急ぐ投資家にとっては負担になります。
株主還元・配当
東レは研究開発と設備投資に資本を回し続ける素材会社であり、典型的な「高配当ディフェンシブ株」とは性格が異なります。それでも、安定配当への姿勢は明確です。
配当の基本方針
東レは中期経営課題の中で、安定的・継続的な配当を基本としつつ、業績連動も加味する方針を掲げています。配当性向は概ね30%前後を一つの目安としてきましたが、市況による利益のブレに対しては、急な減配を避け配当を安定させる姿勢が読み取れます。
配当推移の概観
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 1株当たり配当(近年水準) | 概ね18〜19円程度で推移(年度・業績で変動) |
| 配当方針 | 安定配当ベース+業績連動を加味 |
| 配当性向の目安 | 概ね30%前後 |
| 配当利回り(参考水準) | 概ね2%前後(株価水準で変動) |
| 自社株買い | 機動的に実施(恒常的な大規模買いではない) |
| 株主優待 | なし |
※ 出典:東レ 2025年3月期 決算短信・株主還元方針資料。配当額・利回りは時点により変動するため、最新の確定額・予想は公式IRをご確認ください。
「インカム狙いの本命」とは言いにくい配当水準ですが、減配を避けて安定配当を続けてきた実績があり、成長投資と配当のバランスを意識する銘柄として整理しておくのが妥当です。配当そのものを目当てに買うより、「成長への再投資余地が残っている中で、それでも配当は安定的に出してくれている」と捉えるのが実態に近い読み方です。
今後の展望
東レの中期経営課題では、「グリーンイノベーション(脱炭素・環境)」と「ライフイノベーション(医療・衛生)」を成長領域の軸に据えています。成長ドライバーは「次の10〜20年でモノづくりがどう変わるか」のレイヤーから来ているのが特徴です。
成長ドライバー① 航空機の機材更新サイクル
航空機はボーイング・エアバスとも受注残が過去最高水準で、コロナ禍で抑え込まれた機材更新がこれから本格化します。新型機ほど燃費改善のため炭素繊維比率が高まる傾向にあり、航空旅客需要の回復と機材更新は、東レの炭素繊維事業の中期的な追い風です。
成長ドライバー② 炭素繊維のEV・水素・洋上風力への用途拡大
炭素繊維の用途は航空機にとどまりません。「脱炭素・電動化・再エネ」の時代に欠かせない素材として、次の3領域で需要が広がると見込まれています。
- EV(電気自動車)の車体軽量化:電池が重いEVでは、車体を軽くすることが航続距離の延長に直結します。炭素繊維は鉄の約4分の1の重さで同等以上の強度を出せるため、軽量化材料として用途が期待されます。現状はコストの高さからスポーツカーや高級車中心ですが、量産化が進むほど採用車種が広がる構図です。
- 水素タンクの高圧容器:燃料電池車(FCV)や水素貯蔵・運搬に使う高圧水素タンクは、軽くて圧力に耐える素材が不可欠です。炭素繊維を巻いて作る高圧容器(タイプ3・タイプ4タンク)は、水素社会のインフラ材料として注目されています。
- 洋上風力発電の大型ブレード:風力発電の発電効率を上げるにはブレード(羽根)を長く大型化する必要がありますが、長くなるほど自重で曲がってしまう問題が生じます。軽くて剛性の高い炭素繊維は、大型ブレードの主桁(スパーキャップ)材料として採用が進んでいます。
これらはいずれも各国の脱炭素政策を背景に中長期で拡大が見込まれる用途で、航空機に依存しない需要の裾野を作る成長ドライバーです(ただし前述のとおり、政策依存という長期リスクと表裏一体である点には留意が必要です)。
成長ドライバー③ 水処理膜の構造的な需要拡大
水処理膜も、世界的な水ストレス(水資源の逼迫)、半導体工場の急増(超純水需要)、データセンターの冷却需要を背景に長期で需要が伸び、膜の交換需要というストック収益も積み上がり続けます。
注目イベント
- ボーイング・エアバスの生産レート(月産機数)の回復ペース
- 炭素繊維のEV・水素・洋上風力向け量産採用の進捗
- 原燃料市況・為替の動向
- 中期経営課題の進捗アップデート(決算説明会・IR Day)
同業他社との比較
日本の素材・化学大手の中で、東レのポジションを整理しておきます。比較対象として、炭素繊維で直接競合する帝人、総合化学最大手クラスの三菱ケミカル、素材から医療・住宅まで手がける旭化成を取り上げます。
| 項目 | 東レ(3402) | 帝人(3401) | 三菱ケミカルG(4188) | 旭化成(3407) |
|---|---|---|---|---|
| 売上規模(連結・概算) | 約2.5兆円規模 | 約1兆円規模 | 約4兆円規模 | 約2.9兆円規模 |
| 主要領域 | 炭素繊維・水処理膜・繊維・電子材料 | アラミド繊維・炭素繊維・ヘルスケア | 石化・機能材料・ヘルスケア | マテリアル・住宅・ヘルスケア |
| 炭素繊維の立ち位置 | 世界トップシェア(航空機グレードに強い) | 世界上位(用途多角化) | 世界上位(旧三菱レイヨン系) | 主軸ではない |
| 株主還元の性格 | 安定配当+成長投資 | 業績連動色あり | 配当重視寄り | 安定配当・住宅で底堅さ |
| 主なリスク | 市況・為替・中国勢の追い上げ | 収益のボラティリティ | 石化市況・事業ポートフォリオ再編 | 住宅市況・医療事業の振れ |
※ 出典:各社 2025年3月期 決算短信・有価証券報告書。数値は概算であり、最新値は各社公式IRをご参照ください。三菱ケミカル・旭化成は本ブログに個別記事がないため、ここでは比較情報のみ掲載します。
各社の立ち位置を1行で
- 東レ:航空機グレード炭素繊維と水処理膜で世界トップを張る「複合素材コングロマリット」。素材技術の深さで勝負
- 帝人:アラミド繊維(防弾チョッキ等)・炭素繊維とヘルスケアを併せ持つ「素材×医療のハイブリッド」(→帝人の分析記事はこちら)
- 三菱ケミカル:石化から機能材料・ヘルスケアまで抱える国内最大級の総合化学。ポートフォリオ再編が論点
- 旭化成:素材・住宅・ヘルスケアの3本柱で景気変動を平準化する「分散型化学」
「炭素繊維の純度・世界トップシェアの素材技術」を重視するなら東レ、「素材と医療の二刀流」なら帝人、「総合化学のスケール」なら三菱ケミカル、「住宅を含む事業分散の安定感」なら旭化成、といった整理になりやすい構図です。なお、より川上の基礎化学・素材に関心がある方は住友化学の分析記事やクラレの分析記事も比較材料になります。
どういう人が向いてる?/どういう人はやめておいた方がいい?
向いてる人
10〜20年スパンの長期投資家
東レの追い風は「来期の決算」ではなく「次の10〜20年でモノづくりがどう変わるか」のレイヤーから来ています。航空機の機材更新、炭素繊維の脱炭素用途、水ビジネスという長期テーマに腰を据えて乗りたい方と相性が良い銘柄です。
構造・ビジネスモデル重視派
「炭素繊維の認証ビジネス」「膜のストック収益」など、ビジネスモデルそのものの粘り強さに納得して持てる方には、説明のつく投資対象として位置付けやすい銘柄です。
B2B素材・日本のものづくり信奉派
派手な消費者向けブランドではなく、「世界中の工場の裏側を支える素材」「日本の素材技術で世界と勝負している会社」に投資妙味を感じる方にとって、東レは納得感を持って長期保有しやすい銘柄です。
向いてない人
短期で値上がり益を狙いたい人
東レの追い風は実体産業の設備投資サイクルで効くテーマで、四半期サプライズが頻発する銘柄ではありません。市況・為替で短期業績はブレやすく、値動きだけを追う短期トレードのリズムとは噛み合いにくい性格です。
高配当インカムを主目的にする人
東レは研究開発と設備投資に資本を回し続けるフェーズにあり、配当を厚くするタイプではありません。高配当の主力枠より「成長枠+安定配当のおまけ」と割り切るのが性格に合います。
特定顧客依存や脱炭素テーマに不安がある人
787の構造材としてボーイングへの組み込み度が高く、また炭素繊維の新用途は脱炭素政策が前提の部分が大きいため、「特定顧客への依存を持ちたくない」「脱炭素テーマ自体に懐疑的」な方には、長期シナリオの前提が合いにくい銘柄です。
いずれも「絶対買え/やめておけ」という話ではなく、自分の投資スタイルと銘柄性格の相性を踏まえて、ポートフォリオ全体での組み入れ比率を考えるのが現実的です。
よくある質問(FAQ)
Q. 東レの株は新NISAで購入できますか?
A. はい、東レ(3402)の株式は新NISAの成長投資枠で購入可能です。東証プライム上場の大型株であり、長期投資の候補として検討されることが多い銘柄です。最新の対象銘柄一覧は、ご利用の証券会社サイトでご確認ください。
Q. 配当利回りはどのくらいですか?
A. 株価水準により変動しますが、概ね2%前後で推移してきました。安定配当を基本としつつ業績連動も加味する方針で、減配を避ける姿勢が読み取れます。ただし典型的な高配当株ではありません。最新の配当予想は公式IRページをご参照ください。
Q. 東レはなぜボーイングとエアバスの両方に炭素繊維を売れるのですか?
A. 航空機グレードの炭素繊維は認証取得に膨大な時間がかかり、別の素材に切り替えるには再認証が必要なため、メーカーは簡単にサプライヤーを乗り換えられません。東レは半世紀かけて品質・量産能力を磨き、両社の機体に深く組み込まれているため、競合する2社の双方が「東レを外せない」状態になっています。結果として、どちらの機体が売れても東レの炭素繊維需要につながる構図です。
Q. 炭素繊維とは何ですか?普通の繊維と何が違うのですか?
A. 炭素繊維は、ポリアクリロニトリル(PAN)という原料糸を高温で焼き固めて炭素の繊維にした素材です。鉄より強く(比強度で約10倍)、重さは鉄の約4分の1という特性を持ち、樹脂と組み合わせた「複合材料(CFRP)」として、軽さと強さの両立が必要な航空機・自動車・風力ブレードなどに使われます。普通の衣料繊維とは用途も価格帯もまったく異なる、構造材料向けの高機能素材です。
Q. 東レと帝人はどちらに投資するのがおすすめですか?
A. 一概にどちらが「おすすめ」とは言えません。炭素繊維の世界トップシェアと素材技術の深さ・水処理膜を重視するなら東レ、アラミド繊維(防弾チョッキ等)とヘルスケアの二刀流を評価するなら帝人、という整理が一般的です。東レは事業規模が大きく素材特化色が強く、帝人は素材と医療の分散が効いている点に違いがあります。詳しくは帝人の分析記事もあわせてご覧ください。
Q. 炭素繊維はEVや水素でどれくらい需要が伸びるのですか?
A. EVでは電池の重さを補うための車体軽量化材料として、水素ではFCV・水素貯蔵に使う高圧タンクの構造材として、洋上風力では大型ブレードの主桁材として採用が進んでいます。いずれも各国の脱炭素政策を背景に中長期で拡大が見込まれる用途ですが、現状はコストの高さから採用が限定的な領域も多く、量産化の進展と政策の継続が前提となります。需要拡大は確度の高い「将来の方向性」ではあるものの、立ち上がりのペースには不確実性がある点に留意が必要です。
Q. 素材・化学株はリスクが大きいと聞きますが、東レはどうですか?
A. 素材・化学株共通のリスクとして、原燃料市況・為替・中国メーカーとの価格競争は東レにも当てはまります。一方で、認証ビジネスである航空機向け炭素繊維やストック型の水処理膜が「業績の底」を支える構造を持っており、汎用品だけに依存する化学メーカーよりは収益の振れが抑えられている面があります。とはいえ景気・市況の影響を受ける銘柄であることは変わりません。
まとめ
東レを一言で言うなら、「飛行機・水・スマホの裏側にいつもいる、表に出ない素材の世界企業」です。
繊維で積み上げた素材化学の知見を炭素繊維・機能フィルム・水処理膜・電子材料へ展開し、いまや事業ごとに別業界の世界企業と戦う「複合素材コングロマリット」になっています。中国メーカーの追い上げ・ボーイングの動向・原燃料市況・脱炭素の政策依存といった課題はあるものの、航空機・EV・水素・洋上風力・水処理という長期トレンドはすべて炭素繊維と高機能膜の追い風です。
相性が良いのは、「10〜20年持ちたい」「日本の素材技術が長期で世界と戦える構造を理解したい」という長期投資家。逆に、短期トレード派・高配当インカム派・脱炭素テーマに懐疑的な派には、別の銘柄の方が落ち着いて持てるはずです。
情報源・参考資料
本記事の作成にあたって参照した一次情報・二次情報を以下に整理します。最新値・最新方針は、必ず公式IR情報をご確認ください。
- 東レ 2025年3月期 決算短信
- 東レ 有価証券報告書
- 東レ 中期経営課題「AP-G 2025」関連IR資料
- 東レ 株主還元方針・配当に関するIR資料
- ボーイング・エアバスの航空機向け炭素繊維採用に関する公表情報
- 帝人・三菱ケミカルグループ・旭化成の2025年3月期 決算短信
- 経済産業省・各種業界団体の脱炭素・再生可能エネルギー関連の公開統計
最終更新日:2026-05-29 次回見直し予定:通期決算・中期経営課題のアップデートのタイミング、または2026-11-29(半年後)のいずれか早い方
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免責事項
※本記事は「企業分析」を目的とした内容であり、特定銘柄への投資を推奨するものではありません。 ※投資は自己責任でお願いします。 ※掲載情報は作成時点のものであり、最新情報は各社の公式IR情報をご確認ください。